行事紹介

平成31年度卒入寮式

平成31年3月3日、板橋学生寮で卒入寮式が執り行われました。今年は、第59期生4名が卒寮し、第63期生として11名が入寮しました。式典では理事長先生や同窓会長からお祝いの言葉をいただきました。祝賀会では、卒寮生が寮での思い出や社会に出てからの抱負を、入寮生がこれからの寮生活や大学生活での抱負を述べ、式は滞りなく終了しました。

理事長先生式辞(要旨)

まず、卒寮生の小田桐君、佐藤君、佐渡君、松永君、卒寮おめでとうございます。皆さんが、出身地も通う大学も、学ぶ学問も、年齢も違う、前後七期の寮生とともに過ごした4年間は、みなさんにとって貴重な経験であったと思っています。皆さんはすでにこの寮を離れ、在寮中には多少なりとも、不自由だと感じていたであろう、寮規・寮則のない、自由な生活を始められています。その皆さんに、私がお話したいことは、二つの「じりつ」をこころがけていただきたいということです。一つ目の「じりつ」は自分を律する「自律」です。もう一つが、自分で立つ「自立です」。この寮の規則は皆さんを管理するためのものではなく、皆さんが、規律正しい生活習慣を身につけられる手助けをするためのものです。また、この寮食の献立は、皆さんの健康を維持するためのものです。今皆さんは、何時に起きても、何時に帰っても、何を食べても自由です。また、皆さんに愛情を持って注意をしてくださった、寮監先生も、寮母さんも、もういらっしゃいません。これからは皆さん自身がしっかりと、自己管理をしていかなければなりません。この寮の経験から学んだことを、実践するためにも、それぞれの夢や目標を実現するためにも、しっかりと「じりつ」をした生活を心がけてください。

次に、入寮生の皆さん、入寮おめでとうございます。今年は定員を超える、11名の方が入寮してこられたということを、大変うれしく思っています。その入寮してこられた皆さんに、私がお話ししたいことは、規律正しい生活を心がけて、学生の本分を忘れずに、勉強に集中をしていただきたいということです。皆さんは、それぞれの希望とする大学で、勉強するチャンスを得ました。そしてこの寮には、勉強する環境が整っています。このチャンスや環境を活かせるかどうかは皆さんの心がけ次第です。なぜ、自分がここに来たのかということを忘れずに、それぞれの夢や目標を、少しでも近づけるように、人として成長ができるように、卒寮までの時間を、有意義に過ごしてください。 もう一つ、寮生全員が揃う機会がなかなかないもので、在寮生の皆さん全員にお話ししたいことがあります。松尾國三初代理事長は、松尾育英会を創立するときに、ただ、学資金を支給するだけでなく、学生寮を立てて、そこに育英生全員を住まわせることにしました。皆さんには、この寮でも、これまでの経験、そしてこれからの経験を踏まえて、なぜ、初代理事長が、学生寮を立てることにしたのか、そして、皆さんは、この寮で過ごすことによって、どのように成長することができたのかを考え、卒寮するときに、その答えを出していただきたいと思っております。皆さんがどのような答えを出してくださるかを期待しています。
お願いばかりになってしまいましたが、以上で私の祝辞を終わらせていただきま
す。本日はおめでとうございました。

祝辞(要旨)

本日、4名の方が、松尾育英会学生寮を卒寮され、4人とも大学院に進まれ、引き続き、研究の道を歩まれると、承知しております。 また、今年は11名の方が、新たに、松尾育英会の育英生として、入寮され、大学生活、そして、この素晴らしい環境の学生寮で勉学をスタートされるということで、誠におめでとうございます。
皆さんはこのまさに、グローバルな社会、経済の、大変な転換期を迎える中で、学部、あるいは大学院で、勉学、さらなる研究をスタートされようとしておられます。 大きく三つの、大変大きな潮流がグローバルな世界に流れていると思います。
一つ目はやはり民主主義が、あるいは資本主義が揺らいでいることであります。ポピュリズムや、まさに、やや専制的な統治の台頭が見られます。
第二番目には IT や、あるいは AI の進展によりまして、データをめぐる、グローバルな競争、戦いが行われていることであります。
三つめは米中の、貿易摩擦、というよりもむしろ新しい冷戦ともいうべき、覇権争いが始まっているということであります。
そんな環境の中で、大学での勉学あるいは研究について、各方面から、いろいろな提言がなされております。 私は特に、新たに入寮される方々に三つの期待、お願いをしたいと思っております。

一つ目は何といっても文理の融合であります。ことし、入寮される方は、理科系、文科系、バランスよく入っておられますが、これからのグローバルな社会を担うためには、いわゆるリベラルアーツに加え、もちろん、読解力や発信力といった、基礎的な素養、それに加えて、やはり、ビックデータやら IT を駆使するための、情報科学や数理、統計の基礎素養が期待されています。幸い、この寮は、理科系も文科系も、様々な大学の育英生が揃っておりますので、文理の融合には大変、相応しい、学びの場であると思います。
二番目は多様性、あるいは、グローバル化に対応できるような素養をぜひ、この寮にいる間に習得して頂きたいということであります。社会へ出るとおそらく、様々な、多様な出身の方々をマネッジする、そういう機会もありましょうし、あるいは、異文化であるとか、異なった哲学とかに接する機会もあろうかと思います。本来の専門に加え、できれば、外国語を、一つでも二つでも習得され、また、仮に、異文化と接するような機会があれば、それを貪欲に求めていただきたい。また、学生寮の育英生の OB による先輩ゼミなどもありますので、そういう機会にもそんな経験譚、苦労話に接する機会はあろうかと思います。
三つめは、やはり、グローバルに、格差問題が広がっていることがこの資本主義や民主主義が揺らいでいることだろうと思います。また、日本は、少子高齢化の進展あるいは、人生百年時代というのが最近のキャッチフレーズになっておりますが、そのフロントランナーであります。皆様の、それぞれの分野で、いったい、格差問題あるいは社会的弱者のために、何ができるのか、どんな処方箋があるのか、それぞれの立場で是非、お考えいただき、そして、松尾育英会の建寮の精神であります、恩は社会に返すという気持ちを忘れずに、いずれ何ができるか、ぜひ真剣に考えていただきたいと思います。そして何よりもそういった勉学研究を支える、第一にやはり、頑健な身体を鍛えていただきたい。そして第二に、それを支える、温かいそしてタフな精神、人間力をこの学生寮の様々な機会において身につけていただきたいと思います。
以上をお願いして、私のお祝いの言葉といたします。本日誠におめでとうございま
した。

歓送迎の言葉(要旨)

卒寮生の皆さん、ご卒寮おめでとうございます。また、新入寮生のみなさん、ご入寮おめでとうございます。

卒寮生の皆さんには、自分が一年生として入寮したころから三年もの間非常に多くの面でお世話になってきました。特に、三年前この寮に初めて訪れて、右も左もわからない中で生活のイロハを指導していただいたことは昨日のことのように鮮明に覚えています。皆さんがここを去られた後も、この学生寮が誇るべき集団であり続けられるよう日々精進して参ります。

さて、つい先日大リーグで活躍を続けていたイチロー選手が引退を発表しました。私自身野球がすごく大好きで、非常に興味をもってその会見を深夜に眺めていたのですが、その中で彼は「人より頑張るということはとてもできない。あくまで秤というものは自分の中にしかなく、自分の限界を見ながらそれをちょっと超えるということを繰り返していく。そうすると、いつの日からかこんな自分になっているんだ。」という話をしていました。この話は、訓(いましめ)の中に、”努力なくして成功なし”とういう言葉がある通り、まさにこの学生寮の理念に通ずる部分が多くあると思います。

本年の四名の卒寮生の方々は、全員東京大学大学院でこれからも勉学や研究を続けられ、そして今後各方面でリーダーとして活躍されるものと思います。その過程というものは、必ずしも前進だけでなく後退もあり、あるいは後退しかないような時期もあるのかもしれません。このようなことを私から卒寮生の皆さんにお伝えすることは大変恐縮なことではありますが、そのようなときでもあくまで他者ではなくご自身の秤の中で自らを振り返り、そして地道に努力を続けていくことで初めて切り開かれる道もあるということを思い出していただけると幸いです。今後の先輩方のご活躍をお祈りしています。

そして新入寮生の皆さん、各自上京してこの寮で生活を始め一週間が経ちましたが今どのような気持ちでしょうか。私からこの入寮式という場で一つ問いかけたいのは、「何のために大学生になったのか」ということです。特に皆さんはある程度の学力を認められて、それぞれの大学、またこの寮への入寮が許可されたわけですし、もうそのほかに選択肢はなかったことだろうと思います。しかし肩書きが高校生から大学生に変わったからと言って、内面が大きく変化するわけではありません。かくいう私自身も三年前には漠然とした将来像しか描いていなかったように思います。私は、大学生という期間は自分の将来の目標より具体的に見出だしそれ向けて足を踏み出す期間だと思っています。それは、学業面で努力するのは当然のことですが、それだけでなく様々な人と出会い様々な経験を積む、それも多くの自由な時間を与えられた大学生の特権だと思います。今日という日に、どのような自分を作り上げどのようなアクションをしていくのか、そういったことを再考していただきたいと思います。

明日、新しい元号が発表されあと一ヶ月で平成も終わります。いろいろな物事が変わっていく中で、この寮も変わらないもの、変えていくべきものをよく吟味して新入寮生の皆さんとともによりよい環境を作り上げていきたいと在寮生一同考えています。

最後になりますが、卒寮生の方々のこれからのご活躍と新入寮生の新たな生活が良いものとなることを祈念して式辞とさせていただきます。

卒寮生代表謝辞(要旨)

本日はこのような式典を開いてくださり、ありがとうございます。この良き日に、五十九期生四名が卒寮し、また新入寮生十一名が入寮することを大変うれしく思います。

四年前、私が入寮した年は、寮監先生、寮母さんが交代した年であり、当時は先輩方の力を借りながら手探りで寮を運営しているような感じでした。それから四年、この寮は大きく変わったと思います。寮の新しい理念が寮生に伝わり、寮生が自律して寮の運営をするようになってきました。平成が終わり、社会の変化が求められている中、このタイミングで寮が舵を切ったのはとてもちょうど良かったと感じています。寮生とも、寮監先生寮母さんとも、この話題で議論を重ねて、学生寮の変わり目に少しでも携われたのはとても良い経験でした。しかし、まだ寮の変革は始まったばかりとも言えます。これからの寮生が議論を重ねて寮をより良くしていってほしいと思います。

先日、東京大学の卒業式に参加しました。五神総長が仰っていた中で私が特に記憶に残っているのは、「個々の多様性に目を向けること。特定の個人を深く知り、深く議論し、その中でなんらかの全体像をつかむこと」というようなことです。この寮は、その絶好の機会であり、私はその機会に恵まれていたなあと強く感じました。日本各地から、一癖も二癖もある優秀な学生が集まるのがこの学生寮です。食堂で毎日のように他の寮生と議論できたということは、この寮で得た何よりの財産であり、これからも私の血肉となってくれるだろうと思います。

この四年間、我々が学業に励み豊かな学生生活を送れたのは学生寮のおかげです。理事長先生、寮長先生をはじめとした育英会の方々、寮監先生、寮母さん、同窓会の方々にこの場を借りてお礼申し上げます。松尾育英会の更なる発展を祈念して、謝辞とさせていただきます。

入寮生代表誓いの言葉 (要旨)

春寒次第に緩み、一雨ごとに春の息吹が立ち込めてまいりました。今日この佳き日に、 我々第六三期育英生に入寮を許可していただくとともに、このような盛大な入寮式を挙行していただきますことを大変嬉しく思います。この場をお借りして改めて感謝を述べさせ ていただきます。

本日より、我々は初代理事⻑である松尾國三先生が掲げてくださった訓の下、寮生活を送ることになります。寮生活を通して人間形成を行い、そして、伝統ある松尾育英会の一員であることを心に刻むべく、日々の生活で厳守する誓いを二つ立てさせていただきます。

まず、一つ目は、日々勉学に努め、これからの日本を支える人材になることです。松尾育英会が提供してくださるこの環境を最大限活かし、また、同級生や先輩方と交流する中で様々な分野の知識に触れ、幅広い教養を身につけることによって社会に貢献できる人材となれるよう、日々精進して参りたいと思います。

二つ目は、「精神道場」である学生寮での生活を通して人間形成を行い、社会人としての自主性、協調性を身につけることです。寮での委員会活動や、共同生活を通してしか得ることのできない様々な経験を身に着け、そして、その経験を下に成⻑していけるよう常に内省を怠ることなく、心を引き締めて生活していきたいと考えております。

我々六三期生は以上の誓いを心に刻み、松尾先生のお言葉である「鉄の意志と火の精神力」を常に堅持しながら日々の生活を送ります。最後になりますが、ここで誓った初心を忘れることなく、社会に貢献できる人材となれるよう努力を重ねることを宣言し、入寮生代表の誓いの言葉とさせていただきます。